●色物●演芸場●大切り●奇術●講談●コント●三題噺●芝浜●真打ち●志ん生忌●前座●蕎麦屋寄席●幇間(たいこもち)●手品(師)●出囃子●取り●初寄席●咄●咄家●昼寄席(せき)●腹話術(人形)●二つ目●万歳●漫才●漫談●寄席(幟 囃子)●落語●落語家●浪曲
●色物 ![]()
水打つて色物席に灯が入りぬ 丸山しげる
●演芸場
●大切り
●奇術 ![]()
夜も雪解奇術の種はあつけなく 北野民夫
奇術にして仁術の俳パッとさくら 原子公平
春惜しむ奇術の鳩が二羽三羽 河野南畦 『硝子の船』
祭あはれ奇術をとめを恋ひ焦れ 山口誓子「黄旗」
老医午後は奇術見せをりほととぎす 堀口星眠 営巣期
●講談
●コント ![]()
蜷の道筋書き見えぬコントに似 高澤良一 随笑
●三題噺
●芝浜
●真打ち ![]()
年こしやいまは真打なき世なりけり 加藤郁乎
花火にも前座・真打ちありにけり 高澤良一 宿好
真打チとならで老いけり夏羽織 名見崎新「ホ誌雑詠選集」
●志ん生忌 ![]()
志ん生の呂律恐ろし玉子酒 高澤良一 随笑
志ん生も文楽も間や軒忍 藤田湘子 てんてん
ラムネ抜けば志ん生の出の下座が鳴る 今福心太
●前座 ![]()
花火にも前座・真打ちありにけり 高澤良一 宿好
節分のいづれも前座ばなしかな 久保田万太郎 流寓抄
●蕎麦屋寄席
●幇間(たいこもち) ![]()
うそ寒やめしを炊いてる幇間 龍岡晋
幇間に歌読ませたる月見哉 尾崎紅葉
幇間の後貰ひあり十三夜 今泉貞鳳
幇間の汗の電話の辺にゐたり 細川加賀
幇間の玉介春を逝きにけり 大磯君子
幇間の道化窶れやみづつぱな 太宰治
絽羽織の幇間の居る都電かな 都筑智子
花火見の彼の幇間も老いしかな 松本たかし「松本たかし句集」
青簾幇間やめて兎児を抱く 宮武寒々 朱卓
夏足袋やいのち拾ひしたいこもち 道芝 久保田万太郎
羽子板や武士を捨てたるたいこもち 水原秋櫻子
行く年や梟に似たるたいこもち 白水郎句集 大場白水郎
●手品(師) ![]()
いんちきな手品も楽し芙蓉蟹 筑紫磐井 花鳥諷詠
シクラメン手品のやうに花咲かす 樋笠文
フィナーレの手品のごとく蜜柑落ち 森田 昇
冷房やカード真白となる手品 松本美簾
初席の木を積む日本手品かな 生田高子
呑で吐く炭団の嘘や辻手品 会津八一
失敗の手品の紐や養花天 攝津幸彦 鹿々集
巴里祭定番鳩の手品かな 高澤良一 随笑
手品してみせる牧師やクリスマス 土井治
手品にも芸風ひらひら春めく指 高澤良一 素抱
敬老日手品の紐が突つ立つて 永島紀子
朱欒など手品のごとく出しけり 佐怒賀正美
母の樹や手品のごとくめじろ出す 中尾和夫
秘めてある手品の種や年忘 田中高志
種あかす手品などみて目借時 高澤良一 素抱
蕗の薹手品のごとく鞄より 佐藤美恵子
貝寄する風の手品や和歌の浦 芭蕉
買つて来てなまじ手品の種夜寒 久保田万太郎 草の丈
長兄の手品はいつも薔薇が出る 仁平勝 東京物語
露の身や手品のごとく壷に入る 新井利昭
●出囃子 ![]()
出囃子にしわぶき一つ夏羽織 伊藤典子(群青)
出囃子に江戸独楽走る紐さばき 池森 昭子
出囃子や蚊遣一つの楽屋口 金子きくえ(春耕)
月蝕やかなかなかなの出囃子に 渡辺恭子
●取り
●初寄席 ![]()
初寄席に枝雀居らねど笑ふなり 岸本尚毅
初寄席の曲輪咄の懐紙かな 伊沢恵
初寄席の池田の猪の雪景色 飴山實 『花浴び』
初寄席やいろものになる出の囃子 能村登四郎
初寄席やただ円生の惜まるる 野村喜舟
●咄 ![]()
いねかしとおもふ咄のきぬたかな 斯波園女
かすむ日の咄するやらのべの馬 一茶 ■文化九年壬甲(五十歳)
ここ迄が咄のさはり幽霊譚 高澤良一 寒暑
ことふりしいくさ咄や桃の花 桃の花 正岡子規
ざうざうと湯ざめしてをり路次咄 久米三汀
しくれたる人の咄や四疊半 時雨 正岡子規
しんみりと虎が雨夜の咄かな 路通「秋しぐれ」
すすみ出て瓜むく客の国咄 智月 俳諧撰集「藤の実」
たち咄するうち寒しはつ袷 梅室「梅室家集」
ふゆの月何咄すらん高笑ひ 蓼太
よりあふて若葉がもとの咄哉 若葉 正岡子規
一葉ちる咄(とつ)一葉ちる風の上 嵐雪 (辞世)
一葉散る咄ひとはちる風の上 服部嵐雪
二人ては咄のたらぬ夜長かな 夜長 正岡子規
亭人とまむしの咄二月尽 宮坂静生 樹下
俳諧の咄身にしむ二人哉 身に入む 正岡子規
傾城の咄ときるゝ夜長かな 夜長 正岡子規
先代の苦労咄や薄紅葉 高澤良一 寒暑
初寄席の曲輪咄の懐紙かな 伊沢恵
古くさき咄の多し五月雨 五月雨 正岡子規
咄しけり大つごもりの來ぬ處 大晦日 正岡子規
咄しの種花ぞ昔の曽魯離が居ば 井原西鶴
咄スル一方は寝て夜寒哉 一茶 ■文化十四年丁丑(五十五歳)
問ひかへす咄もなしや年わすれ 曲翠 極 月 月別句集「韻塞」
四月馬鹿のんしやらんすの咄せり 下村槐太 光背
埋火や隣の咄聞てゐる 埋火 正岡子規
塩舐めて夜咄のなほ続きけり 大石 悦子
夏のくれたばこの虫の咄し聞く 重厚 五車反古
夏川や水の中なる立咄し 正岡子規
夕立を見ながら歌の咄かな 夕立 正岡子規
夜咄に三日の酒のはてしなし 石田波郷
夜咄に今日貰ひたる柿加はり 村越化石
夜咄に榾の切口泡吹けり 渡部節郎
夜咄に重慶爆撃寝るとする 鈴木六林男
夜咄のあいそにちよいと蚊やり哉 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
夜咄のいつしか雪となりにけり 日下部宵三
夜咄の夫呼び戻す砧かな 古白遺稿 藤野古白
夜咄の河童に家族なかりけり 岡崎桂子
夜咄の濃き影に添ふ淡き影 源 鬼彦
夜咄の灯あかり軒の雪あかり 古賀まり子
夜咄の牡蠣の雑炊秀衡椀 及川貞 夕焼
夜咄の翁の一人ことし欠け 大石悦子 百花
夜咄の茶事してみたき囲炉裡かな 大森扶起子
夜咄の茶事果て月に散じけり 鈴木貞雄
夜咄は悪ろが滅ぶと了りけり 角光雄
夜咄は重慶爆撃寝るとする 鈴木六林男
夜咄やまた取出す唐津物 高橋睦郎 金澤百句
夜咄やササ戸越し月明りらし 及川貞 夕焼
夜咄や月はも松を離れたり 石川玲子
夜咄や浦の笘屋の秋近き 秋近し 正岡子規
夜咄や詞残りて夏の月 立独 選集「板東太郎」
夜咄や関守石に灯が及ぶ 永井龍男
夜長咄狐が人を騙す型(かた) 高澤良一 鳩信
夜雨聴きて他人に雲雀の咄する 下村槐太 天涯 下村槐太全句集
夫婦雁咄して行ぞあれ行ぞ 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
女二人咄す戸口や夏の月 夏の月 正岡子規
宝恵駕をおくりて軒の立咄し 後藤夜半 翠黛
家づと(土産)や咄のさくら花火船 調泉 選集「板東太郎」
寝いそぎの蚊帳を後に咄かな 銀獅 五車反古
寝がてらや咄がてらや山をやく 一茶 ■文化十三年丙子(五十四歳)
寝咄の切間〜を団扇哉 一茶 ■文政七年甲甲(六十二歳)
寝咄の足でおり〜鳴子哉 一茶 ■文政五年壬午(六十歳)
寶恵駕をおくりて軒の立咄し 後藤夜半
少将の尼の咄や志賀の雪 松尾芭蕉
怖ろしき咄の後の水羊羹 鈴木鷹夫 渚通り
旅人の咄しして行く枯野かな 枯野 正岡子規
昔の夜のごと夜咄の炉をかこむ 佐野美智
昔咄団扇の風に薫りけり 団扇 正岡子規
春の日やむかし咄は朝茶の子 調和 選集「板東太郎」
晩涼や月いついでし立咄 久保田万太郎 流寓抄以後
暖鳥(ぬくめどり)同士が何か咄すぞよ 一茶 ■文化十一年甲戊(五十二歳)
月さびて明智が妻の咄せむ ばせを 芭蕉庵小文庫
月さびよ明智が妻の咄せん 芭蕉
月の出や里の咄もぽつり出る 村越化石
朧より朧に人の咄かな 朧 正岡子規
松過ぎの夜咄の炎の影短か 長谷川久々子
枕上ミの妻と夜咄してゐたり 森澄雄
栃の實の渋抜夜長咄かな 八木林之介 青霞集
桃太郎の咄もたえて夜長哉 夜長 正岡子規
桜井が咄し中半(なかば)や荻の風 中村史邦
橋涼みこゝにも金の咄かな 古白遺稿 藤野古白
河豚汁に又本艸の咄哉 其 角
涼台咄上手をまつの月 尾崎紅葉
渡り鳥鳴くは古郷の咄かな 内藤丈草
澄雄来て硯咄や菊びより 角川源義 『西行の日』
焼栗の灰吹きながら咄かな 滝川愚仏
熱き夜の寝られぬよその咄かな 暑 正岡子規
献々は咄してすみぬけふの月 服部嵐雪
男寄れば夜咄となる飛花落花 友永佳津朗
瘤とりの咄すれば寝る子よ春の雪 成瀬櫻桃子 風色
目のひかる夜咄ずきや冬の月 許六
砧槌立てて身にしむ咄かな 橋本鶏二 年輪
秋の夜を打ち崩したる咄ふな 芭蕉
積み上げし麦藁陰や立咄 麦藁 正岡子規
立待月咄すほどなくさし亙り 阿波野青畝
羽抜鶏咄咄逃ぐるお伊勢道 田中英子
聞かせ合ふ町の咄や冬の里 野坡
葉桜や昔の人と立咄 葉桜 正岡子規
藁砧うちつつ咄あともどり 橋本鶏二 年輪
藪入や縁きる咄よもすがら 正岡子規
蚯蚓鳴いて隣の咄きこえけり 森川暁水 黴
行水に咄すをきけば西鶴忌 松瀬青々
進み出て瓜むく客の国咄し 園女 俳諧撰集玉藻集
酔ふとなくはずむ咄や春火桶 西島麥南 金剛纂
阿波に多き狸の咄十夜粥 成瀬櫻桃子
陣取の咄して行く枯野かな 尾崎紅葉
霧雨や貴船の神子と一咄し 曲翠 俳諧撰集「藤の実」
●咄家 ![]()
噺家の出の軽やかな夏羽織 浜崎古都
噺家の坐してすずしき郡上かな 黒田杏子 花下草上
噺家の扇のごとく器用なり 高澤良一 随笑
横顔を噺家と知る落鰻 中戸川朝人 星辰
●昼寄席(せき) ![]()
春霖を囃す昼寄席素通りに 菅 裸馬
昼寄席に晒井の声きこえけり 渡辺水巴 白日
●腹話術(人形) ![]()
君はあかはらか腹話術の男 栗林千津
沖に湧く革命歌 誰が腹話術 江里昭彦 ロマンチック・ラブ・イデオ口ギー
泣初やおまはりさんの腹話術 木倉フミヱ
濡縁で聞きて夜蝉の腹話術 高澤良一 素抱
腹話術習つてをりし裸かな 清水安奈
腹話術腹の底より秋の暮 高澤良一 鳩信
長き夜やあなおもしろの腹話術 中村哮夫
餌をくはへゐる鶺鴒の腹話術 堀口星眠 青葉木菟
●二つ目
●万歳 ![]()
「万歳」を強ひられ巨童桐の笛 香西照雄 対話
お万歳少しいやしき笑顔かな 高橋淡路女 梶の葉
お城がすみ万歳の鼓まだきこゆ 林原耒井 蜩
かけあひの春鼓重ねて万歳師 加藤憲曠
きのふ見し万歳に逢ふや嵯峨の町 蕪村
ざりがにの万歳往時の突撃も 高澤良一 素抱
すたすたと路次ぬけゆくやお万歳 白水郎
めでたしや加賀万歳の町尽くし 沢木欣一 往還
エレベーター万歳乗せて昇り来し 飯島正人
サバイバル万歳を見ている午前二時 平田栄一
サーファーの万歳をして果てにけり 小橋末吉
フラミンゴそろえば万歳したくなる 岸本マチコ
万歳がほめし柱にむめ活けむ 大江丸
万歳が撫でて行きたる小犬かな 五所平之助
万歳にたわめる藪や夕渡舟 飯田蛇笏 霊芝
万歳に濠白波の立つ日かな 石田勝彦
万歳に若狭の菓子の売られけり 山本洋子
万歳に陽ざしの深き一間あり 児玉輝代
万歳のうしろ姿も恵方道 高浜虚子
万歳のえへへおほほとめでたけれ 小田中雄子
万歳のお宿はどこぞ梅のはな 梅 正岡子規
万歳のさす手引く手や鼓打つ 挿雲
万歳のならびとほりてわらび山 宇佐美魚目 天地存問
万歳のひとり来てゐる離島かな 茨木和生
万歳のふみならしけりさゞれ石 梅室
万歳のまかり出たよ親子連 一茶 ■文化元年甲子(四十二歳)
万歳のやどを隣に明けにけり 荷兮
万歳のわらわらゆきて岬かな 関戸靖子
万歳のゑいやとはいる枢かな 竹也
万歳のゑぼし姿やわたし船 炭 太祇 太祇句選後篇
万歳の三河の国へ帰省かな 風生
万歳の三河の波の鼓のごとし 林火
万歳の佇み見るは紙芝居 高浜虚子
万歳の冠初めよりゆるむ 森田峠
万歳の初音や門に入りつづみ 井月の句集 井上井月
万歳の口や真砂は尽きるとも 千代尼
万歳の吹かれ来にけり天津風 野村喜舟 小石川
万歳の太夫の鼓ひとつの荷 結城美津女
万歳の子も万歳の十二歳 高浜虚子
万歳の影大きなる朝日かな 東春
万歳の折れんばかりの大男 浜井武之助
万歳の来てゐる夜の神楽坂 蟇目良雨
万歳の渡りしあとや水温む 水温む 正岡子規
万歳の烏帽子かしぐは酔へるかな 野村喜舟
万歳の烏帽子さげ行く夕日かな 闌更
万歳の畑うつ頃や桃の花 横井也有 蘿葉集
万歳の算へ残しよ粥ばしら 黄花
万歳の終りの腰は泣きさうに 加藤知世子 花寂び
万歳の舞の手富士をゑがきけり 茂恵一郎
万歳の舞声聞ゆ梅が門 几董
万歳の袴がくがく坂下る 殿村菟絲子 『路傍』
万歳の遠ければ遠き世のごとく 青邨
万歳の酔うて居るなり船の中 久保田九品太
万歳の里見廻して山ばかり 百合山羽公
万歳の間に玄界のどよもしぬ 野中亮介
万歳の頤ながき旦かな 白雄
万歳の顔が出てくる雪の木戸 武藤紀子
万歳の顔に紐垂る煙霧都市 小川双々子
万歳の鶴の広袖ひろげ舞ふ 福田蓼汀
万歳の鼓にひらく梅の花 梅 正岡子規
万歳の鼓に袖のかぶさりて 高浜虚子
万歳の鼓森一つ隔てたり 臼田亞浪 定本亜浪句集
万歳は二人づれなる山河かな 佐野青陽人
万歳は今も烏帽子ぞ都鳥 正岡子規
万歳は縞蛇またぎ行方も知れず 安井浩司 阿父学
万歳は語り部の里素通りに 杉本寛
万歳やあくびにも扇とりあへず 東皐
万歳やそも〜飯を立場茶屋 角田竹冷
万歳やめしのふきたつ寵の前 炭 太祇 太祇句選
万歳やもどりは老いのはづかしく 千代女
万歳や伊賀の上野の駅の前 西山泊雲 泊雲句集
万歳や佐渡より金の湧き貌に 野村喜舟 小石川
万歳や合点々々の鼓打つ 八木林之助
万歳や岩間は古き宿場町 井上史葉
万歳や左右にひらいて松の陰 向井去来
万歳や年のはじめの夕まぐれ 久保田万太郎
万歳や東風にふかるる餅袋 一茶
万歳や爰八橋に酔うてゆく 蓼太
万歳や猿曳よりも吹かれ行く 余子
万歳や百年いきなば友なからん 高湯順三九
万歳や真赤な月の雑木山 辻桃子 桃
万歳や窪田箸尾の鼓振り 富浪夏風
万歳や篠に小笹に雪つもり 小川軽舟
万歳や舞ひをさめたるしたり顔 太祇
万歳や金春を出て烏森 竹村秋竹
万歳や雀驚く鶴の丸 野村喜舟 小石川
万歳や飯の吹きたつ竃の前 太祇
万歳や館の構にかゝり来る 尾崎迷堂 孤輪
万歳や馬の尻へも一祝ひ 一茶
万歳や鶏おどろかぬ古つづみ 元夢
万歳や鶏なくかたへ行く野道 鳳朗
万歳や黒き手を出し足を出し 正岡子規
万歳や鼓を膝に夕渡 萍雨
万歳をして冬に入る鵙の贄 大木あまり 火球
万歳をして初空へ縮む母 木下蘇陽
万歳をして緑蔭を出で来たる 坊城俊樹
万歳をして落つ蝉の手をそのまゝ 高澤良一 寒暑
万歳を其夜とめたる長者振り 四明句集 中川四明
万歳を座敷に上げて舞はせけり 茨木和生
三月に万歳見るや不破の関 [ブン]村
三河万歳刈り田へ犬は尾を振れり 星野昌彦
三河万歳東京行は混みにけり 加藤かけい
三河万歳熱の子の瞳が笑ひ出す 志摩芳次郎
三河万歳語る師の笑み太夫めく 田中英子
乗り合はす伊予万歳や船の旅 貞吉 直子
五月万歳「飴の中から金太さんが出たよ」 磯貝碧蹄館 握手
亡父亡母を知る万歳師来て泣けり 海老名衣子
今もなほ千代のためしとご万歳 中田はな
使者の間に鼓しらべや御万歳 四明句集 中川四明
出てゆくや万歳の靴泥あげて 臼田亜浪 旅人
出支度の玄関へ来てお万歳 楠目橙黄子 橙圃
初旅のまづ万歳の三河かな 百合山羽公
前掛の母の万歳花かつを 攝津幸彦
加賀万歳頤まろき太夫かな 高村俊子
大盃を加賀万歳は飲み干しぬ 細川加賀
子に泣かれ加賀万歳の困りけり 伊藤トキノ
山里は万歳遅し梅の花 芭蕉
崖に出て万歳の鼓引き返す 稚魚
戸あくるや萬歳來る東より 万歳 正岡子規
才藏は葛西あたりの訛かな 万歳 正岡子規
新旧の町名づくし加賀万歳 浦野美智子
方言を並べて越前万歳師 藤田フジ子
朝な朝な萬才東へ霞み行く 万歳 正岡子規
本業は粉屋てふ加賀万歳師 千田一路
松あれば則ち入るや萬歳樂 万歳 正岡子規
松過ぎの万歳が降り文庫駅 青木重行
枯蟷螂何故万歳をするのだろう 北川邦陽
橋越えて三河万歳村移る 野原春醪
正月の夜を万歳の羽織かな 紫暁
源八や万歳も来る僧も来る 水落露石
澤龜の萬歳見せう御國ぶり 万歳 正岡子規
烏帽子着て万歳走る余寒哉 余寒 正岡子規
無雜作に萬歳樂の鼓哉 万歳 正岡子規
玄関に靴やら下駄やら三河万歳 星野昌彦
秋日殊に万歳幡は朱かがよふ 太田鴻村 穂国
紅梅や万歳ばかり烏帽子にて 紅梅 正岡子規
老いぼれし唄はりあげぬ御万歳 阿部みどり女 笹鳴
老万歳ぽんと機嫌の古鼓 百合山羽公
臥てきけばさびしきものよお万歳 鷹女
花散るや加賀万歳に人まばら 高橋睦郎 金澤百句
花盛りきけば万歳山といふ 吉田澗城
萬才のはなし給ふや國なまり 万歳 正岡子規
萬才の目出たくしたるいほり哉 万歳 正岡子規
萬歳が笑へば山もわらひけり 万歳 正岡子規
萬歳と相のりしたる渡し哉 万歳 正岡子規
萬歳に見つけられけり草の庵 万歳 正岡子規
萬歳の家にめでたし古鼓 万歳 正岡子規
萬歳の歸るあとより霞みけり 万歳 正岡子規
萬歳の踊りかけたり町はつれ 万歳 正岡子規
萬歳の顔のやつれや田植笠 万歳 正岡子規
萬歳の鼓を倒す枕かな 万歳 正岡子規
萬歳の鼓聞ゆる朝日かな 万歳 正岡子規
萬歳は今も烏帽子そ都鳥 万歳 正岡子規
萬歳も煙草すふなり町はづれ 万歳 正岡子規
萬歳や三河町出て淡路町 万歳 正岡子規
萬歳や四條をもどる夕日影 万歳 正岡子規
萬歳や黒き手を出し足を出し 万歳 正岡子規
裏山の梅ちらほらやお万歳 雑草 長谷川零餘子
誰から死ぬ三河万歳多弁にて 星野昌彦
送る万歳死ぬる万歳夜も円舞曲(ワルツ) 攝津幸彦
酒断つて万歳寒きラジオ切る 石川 桂郎
鎌倉の万歳谷戸で昏れにけり 藤田美代子
門松や万歳去つてちょろ来る 大釜菰堂
霧去りて万歳の手の不明かな 攝津幸彦
高らかに芒万歳して枯れゆく 原子公平
鱧食うて伊予万歳を楽しめり 星野高士
あっぱれの阿蘭陀万才秋天下 高澤良一 燕音
万才のあつさりと祝ぎほほゑまし 深川正一郎
万才のうしろ姿も恵方道 高浜虚子
万才の佇み見るは紙芝居 高浜虚子
万才の泊るならはし大藁家 大隈米陽
万才の遠ければ遠き世のごとく 山口青邨
万才の雪嶺にかざす扇かな 志水圭志
万才はお家繁昌と袖かへす 山口青邨
万才や佐渡より金の湧き顔に 野村喜舟
万才や堤を通る高足駄 蒼[きう]
万才や左右にひらいて松の蔭 去来
万才や車の隙をひよいひよいと 石塚友二
万才師しはぶき傷兵を笑はする 岸風三楼 往来
子に泣かれ加賀万才の困りけり 伊藤トキノ
改札に万才酔ひて叱られをり 加藤秋邨 まぼろしの鹿
福耳の万才声もゆたかなる 伊藤敬子
阿蘭陀万才手書きの髭も爽やかに 高澤良一 燕音
●漫才 ![]()
かけもちの漫才白粉が浮く西日 文挟夫佐恵 黄 瀬
漫才館妻子ラムネをころがしたり 安住敦
牡蠣食つて漫才夫婦相対す 安住敦
諍ひの夫婦漫才めく薄暑 遊菜
●漫談
●寄席(幟 囃子) ![]()
ぎんぽから揚げてもらうて寄席かへり 北村かつを
こほろぎや入る月早き寄席戻り 渡辺水巴 白日
こほろぎや寄席の楽屋の独り酒 水原秋櫻子
ふるき寄席閉づる噂や恵比須講 水原秋櫻子
何燃えて瞳をひく火鉢寄席の秋 宮武寒々 朱卓
初寄席に枝雀居らねど笑ふなり 岸本尚毅
初寄席の曲輪咄の懐紙かな 伊沢恵
初寄席の池田の猪の雪景色 飴山實 『花浴び』
初寄席やいろものになる出の囃子 能村登四郎
初寄席やただ円生の惜まるる 野村喜舟
寄席にゐて身の翌日思ふ夜寒かな 龍雨
寄席の前焚火してゐる淋しさよ 成瀬正とし 星月夜
寄席の戻りべつたら市へまはりけり 増田龍雨 龍雨句集
寄席はねて上野の鐘の夜長哉 夜長 正岡子規
寄席はねて衿かきあはす一葉忌 真鍋 完子
寄席を出し目鼻に寄るや冬の霧 石田波郷
寄席を出て秋夕焼のすさまじく 杉山岳陽 晩婚
寄席出でて方向音痴秋の暮 辻田克巳
寄席囃子聞(きき)のよろしと河鹿飼ふ 槐太 (めをと膳哉)
寄席囃子聞こえてをりぬ初観音 浅場芳子
寄席小路に遊ぶ児や溝の三日の月 久米正雄 返り花
寄席湧きて笑はぬ顔も円朝忌 小夫香久之
寄席裏に住みついて夏大根おろす 橋間石「和栲」
寄鍋を囲む寄席好き芝居好き 伊東白楊
待つとなく寄席開くころの冷し酒 藤田湘子 てんてん
手爐さげて頭巾の人や寄席を出る 頭巾 正岡子規
早く行きて下足番居ず寄席の秋 阿部みどり女 笹鳴
春の夜や寄席の崩れの人通り 春の夜 正岡子規
春霖を囃す昼寄席素通りに 菅 裸馬
昼寄席に晒井の声きこえけり 渡辺水巴 白日
更衣寄席へ行く日を胸づもり 藤田湘子 てんてん
毛布被りたるがまじりし寄席の歸り哉 毛布 正岡子規
毛布被る一むれ寄席の歸りかな 毛布 正岡子規
永き日の寄席の呼び込みおもろいでぇ 松野篤子
深川に寄席の帰りの桜鍋 杉阪大和
煤掃きしともなく寄席へゆきにけり 中島月笠 月笠句集
猫八が虫を鳴く夜の寄席を出る 永六輔
猫八のうぐひす声や寄席日永 遠藤喜久女
町中や庭持つ寄席の畳替 増田龍雨 龍雨句集
節分やたまたまとほる寄席のまへ 久保田万太郎 流寓抄
簪屋と向きあふ寄席や夜の秋 寒々
蒸す寄席に一夜のあそび梅雨に入る 石塚友二 方寸虚実
追儺寺抜けて大須の寄席囃し 加古家也
鉱山人のうまし女連れぬ寄席の秋 宮武寒々 朱卓
門火焚く横丁曲る寄席がある 京極杞陽 くくたち上巻
●落語 ![]()
なきがらの耳に流れる落語かな 倉阪鬼一郎
三平の落語つくづく新豆腐 鷲田 環
十二月遁れて坐る落語席 野地新助
子の年の鼠にちなむ落語哉 新年 正岡子規
屁のごとき唄と落語と年逝かす 石塚友二
川渡御に歌舞伎・文楽・落語舟 田中英子
機上十五夜ひとり落語を聞いており 寺井谷子
正月の人あつまりし落語かな 正月 正岡子規
神の留守落語の語り爆発す 丸山道代
落語きく友もまた身をねぢてをる 梅林句屑 喜谷六花
落語に泣き小説に怒り湯気の中 石川桂郎 含羞
落語好きの少年と居て目刺焼く 長谷川かな女 花寂び
鶉なく宇治に落語の興りけり 龍岡晋
●落語家 ![]()
落語家になると言ふ人初礼者 吉井勇
落語家の死が片隅の冬の雷 有馬朗人 知命
●浪曲 ![]()
蒸饅頭浪曲なれど母恋ふ声 中村草田男
浪曲の鳴りやまぬ百足虫追ひ殺す 秋元不死男
浪曲の夏めき語る蓄音機 筑紫磐井 婆伽梵
浪曲もゆるし聞くべし月の寮 林翔 和紙
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